かなり古い作品ですが、古代史漫画の「古典」ともいえる存在かと思うので、
ご紹介しておきます。
現在は、電子書籍や、講談社漫画文庫からも出ています(2007年)。
大正ロマンの定番少女漫画『はいからさんが通る』の大ヒットや、
古典「源氏物語」を漫画化した『あさきゆめみし』など、
多くの歴史もの・時代ものを手掛けてきた大和和紀さん。
この漫画も歴史もの、かつ「青春群像劇」ともいえる作品です。
* * *
舞台は、飛鳥時代。
表紙の女性は、万葉随一の女流歌人・額田女王(ぬかたのおおきみ、額田王)。
はじめ大海人皇子(のちの天武天皇)に愛され子を生すが(十市皇女)、
のちに大海人の実兄・中大兄皇子(のちの天智天皇)に愛されるようになる。
彼女をめぐって兄弟が争ったという人もいるが、兄弟の間の緩衝となったのが、
中大兄皇子の忠臣・中臣鎌足(のちの藤原鎌足)であった。
額田の実姉・鏡女王は中大兄に嫁いだ後、鎌足に下賜されている。
鎌足の死後、中大兄も亡くなると、大海人は皇位を継ぐことになっていた
中大兄の息子・大友皇子を排して天皇となるが(壬申の乱)、
漫画では描かれず、中大兄が亡くなるところで終わっている。
* * *
やはり少女漫画ですから、かなり美化された物語ではあります。
有間皇子ら政敵の排除なども、思い切り美しく描かれています。
額田と大海人・額田と中大兄、それぞれの愛の形も、それぞれに純粋。
▲ワイルドな魅力の兄・中大兄皇子 [99頁]
▲優しく包み込むような弟・大海人皇子 [92頁]
そして兄弟は互いを認め信頼し合い、最後、病床の兄を見舞う弟にも、
警戒や謀反の気持ちはひとすじもありません。
あの兄をうらぎることはできない…… [178頁]
また、額田が詠んだ歌も漫画の中に巧みにとりいれられ、大きな魅力です。
この漫画で彼女の代表的な歌は子どものころに覚えました!
▲「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は榜ぎ出でな」[112頁]
さらに私が惹かれたのは、中臣鎌足の描き方です。
漫画の鎌足さんはこんなにかっこよく描かれています(なぜか銀髪?)。
冷徹、怜悧な“朝廷きっての宰相”です。
▲「藤原氏人名索引」のアイコンに使わせていただきました☆
もっとも心を動かされたのは、鎌足さんの中大兄への忠誠ぶり
二人の痺れる主従関係場面集(笑)をお送りいたします
■謀略のシーン
中:鎌足……はがねのような男だ おまえは
おまえには 恋も立ちいる すきまがないようだ
鎌:中大兄皇子さまを 皇位におつけするために
わたしは生まれてきたのですから [29頁]
■苦境の中、二人が向き合って語るシーン
鎌:臣は……皇子さまがお考えになられていることを ことばにしたにすぎません
いままでもそうでした……
中:天がわたしに このような臣を与えてくれたことを 感謝しよう
(中、鎌の両肩に両手を預けるようにかける) [129頁]
■さらにこれがすごい!!
鎌足さんの鏡女王への求婚シーン
(まだ中大兄を慕う彼女に)
鎌:なんの不満がありましょう
中大兄皇子は このわたしの生命にもあたるかた……
そのむかし 蘇我氏をたおすため策を練り……
意見をたたかわせ
そのたびごとに 生死をともにするのは この方だと確信した……
大極殿に蘇我入鹿を討ったときも みずから先頭に立って斬りこんでいった……
その若さ 激しさを わたしは愛していた……
この人を王位につけるためになら わたしはなんでもする
この人のために 自分は生まれてきたのだ……
鏡王女 わたしたちは……ともに一人の人を愛してきたようだ
そのことで わたしたちは つながっていけないだろうか……? [139-140頁]
……って、鏡への求婚のはずなのに、延々と中大兄への愛を語る鎌足さん(´∀`*)
鏡も「そんな心やさしい面があるなんて……」とか、鎌足さんに心を許す!!←
ひたすら中大兄を愛し、忠実な鎌足さんです。
この漫画が、私の主従関係好きと藤原氏好き(中臣鎌足は藤原氏の祖ですから)
の、まさに原点なのです。
私の人生を狂わせた? いや彩った! 一冊です。
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