◆漫画紹介◆飛鳥時代、長岡良子<古代幻想ロマンシリーズ>

 先日、『天の果て地の限り』で天智天皇の愛人・額田女王の漫画を
 ご紹介したので、天智の大后である倭姫王の漫画をピックアップ。

 倭姫(やまとひめ)皇后、倭姫王(やまとひめのおおきみ)
 天智天皇の大后、皇后、要するに正妻です。

 

 これも少々古く、以前ご紹介した『初月の歌』と同じシリーズの一冊です。

 倭姫王は、のちの天智天皇つまり中大兄皇子の異母兄・古人大兄皇子の娘。
 古人は乙巳の変のあと、中大兄によって殺されていますから、敵同士といえます。
 中大兄は斃した政敵の娘を娶ったわけです。
 彼にはほかに皇族の妻は知られていませんから、正妻候補であったでしょう。
 ただし史実では、二人がいつ結ばれたのかはわかっていません。

 漫画では、優しく、ときに強引に、中大兄は本当に彼女を愛します。
 憎しみを募らせる姫でしたが、いつしかそれは愛にかわり……

 
 それにしても。 
 孝徳天皇の子・有間皇子は、つねに便利なキャラクターとして登場しますね。
 『天の果て地の限り』でも有間は額田に淡い想いを寄せ、罪を得る前に会いにくる。
 たしか里中満智子『天上の虹』でも、主役の鸕野讃良皇女(持統天皇)とはじめ
 恋仲かなんかじゃなかったっけ?
 そしてこの『夢の奥城』でもやはり、有間は倭姫王を愛して死んでいきます。
 だけどみんな結局は……という展開

 
 たしかに最後は憎い敵である中大兄を愛してしまう姫ですが、
 そこには葛藤もあり、『天の果て…』よりはそのあたりに読み応えがあると思います。
 美化も十分なされますが、ある程度政争のみにくさについても描かれています。

 なんといっても、主人公の倭姫王が、凛として魅力的に描かれており、好感が持てます。

 夢の奥城
 ▲姫のスラリとして知的で大人っぽいルックスも魅力的。
 ちなみに天智天皇はこのシリーズの主人公的存在・不比等の父に擬されているふしがあり、似ている。
 (シリーズ6冊目のこの漫画で初めて天智の顔がはっきり描かれた) [108頁]

 天智天皇が世を去った後、姫の凛々しさは最大限に発揮されます!
 胸の悲しみを表すことなく、先帝の大后としてのつとめを立派に果たすのです。

  私に―― この国を 統べよ――と……?(略)
  その必要は ありません
  亡き帝が最後の力をふりしぼって後事を託されたのは
  大友皇子様 あなたではありませんか(略)
  何を迷っておられるのです?  [164-5頁]

 天智の子・大友皇子を叱咤し、残された者たちをよくまとめ……


 『日本書紀』には、天智の弟の大海人皇子が、兄の死に際し「倭姫王が天皇となり
 大友皇子が政治をみるべきだ」と進言したとあります(671年10月17日条)。
 天智の死後称制したという説、『万葉集』の「中皇命」を彼女に擬す説もあります
 (ただし『万葉集』には大后・倭大后と表記される箇所もある)。


 そして漫画のラスト、大友皇子の敗死をへて、みなを送り出した倭姫王。

  私はようやく すべてのものから 解き放たれた
  愛からも 憎しみからも  [196頁]

 『水鏡』の天智天皇の逸話を思わせる、その、結末……




 ■シリーズについて、全作品まとめました■
  長岡良子<古代幻想ロマンシリーズ> (くじょう みやび日録)





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