◆本紹介◆奈良時代、平安時代・山之口洋、平岩弓枝

 今年(2015年)はテレビ朝日系にてドラマ『陰陽師』の放送があったりして、
 ちょっとだけ盛り上がりを見せた古代史エンタメ界でした。

 古代史の“あやかし”系小説といえば、この『陰陽師』(夢枕獏著)なのでしょうね。
 ドラマのあと、『よりぬき陰陽師』という同小説のベストも出たので読みました。



 ついでに過去の映画版の『陰陽師』も見てみました。
 今年放送のドラマは市川染五郎&堂本光一(晴明&博雅)バージョンでしたが、
 映画版は野村萬斎&伊藤英明。正直、キャスティングは後者に軍配かな?
 私のイメージは岡野玲子さんの漫画版なのですが。


 ……と、ここまで書いてきてナンですが、でも実は私、あまり陰陽師とかの
 いわゆる“あやかし”系は得意(好み)ではありません

 岡野さん版は絵が美麗(『ファンシィダンス』時代から好き)という利点がありますが、
 映画版というのは、どうも原作ストーリーを少しずつ寄せ集めたうえに
 まったく別のストーリーも乗せてとにかく盛り込んで再構成したもののようで、
 スミマセン、実はあまり魅力を感じませんでした(今年のドラマ版も同様)



 しかし! あやかし系不得意の私でも、面白かった・お薦めの・小説があります
 (前置き長い) 2つ(1冊と1シリーズ)あげますね
 クリスマスイブに贈る、“あやかし特集”でございます


 天平冥所図会

 タイトルから察せるように、舞台は天平文化真っ盛りの平城京の時代。
 主人公は、称徳女帝に仕えて有名な女官・明るくて愛嬌ある和気広虫(わけのひろむし)
 その夫・有能だが飄々とした役人一筋の男、葛木連戸主(かつらぎのむらじへぬし)

 最初の章で大仏造立にまつわる話、次に正倉院への宝物献納にまつわる話……
 とここまで広虫と戸主の出会いから夫婦時代のお話です。
 ところが次の藤原仲麻呂の乱にまつわる話の冒頭で、なんと戸主はひょんな事故で
 ひとり死んでしまいます! それからは、“幽明境を異にする”夫婦の活躍が展開!!
 最終話は、広虫と弟・和気清麻呂を語る上でははずせない、宇佐八幡神託事件
 にまつわる話
となります。

 実に王道の中央政府を中心とした歴史的出来事、政争が描かれるわけですが、
 広虫と戸主のキャラクターも相俟って、どこかほんわかほっこり
 有名な(それほどでない人も)歴史上の人物から役人、市井の人々などさまざまな
 人物が登場し、途中で落命して亡霊となってしまう人もいますが、みな、それぞれに
 キャラクターが立っており、(自分なりに)真摯にその人生を生きています。

 もちろん亡霊も登場するくらいですから超常現象的な展開もありますが、
 戸主をはじめみなスーパーマンではなく欠点もあるところが憎めない。
 小説では亡霊など人ならぬものが歴史的展開に重要な役割を果たしたりもしますが、
 結局歴史を動かしたのは生きた人間、また人間の欲望です。
 “あやかし”のお話なのに、人間臭さに惹かれる、いとおしい物語。


 また、イラストもゆるっとして可愛い。登場人物の紹介頁はこんな感じ。
 吉備真備・由利父娘が物語を通しての主要人物になっています☆
 天平冥所イラ


 
天平冥所図会 (文春文庫)
山之口 洋
文藝春秋
2010-04-09



 
平安妖異伝』『道長の冒険

 こちらは平岩弓枝さんの平安朝シリーズもの。2冊きりなのが残念ですが。

 主人公は、古代史上の超有名人・藤原道長
 しかし望月の歌を詠むほど他の追随を許さない無二の権力者になるのは
 もう少し後のこと。まだ若い道長のお話です。

 実際“あやかし”を解決する存在は、道長ではなく不思議な力を持つ雅楽の天才・
 秦真比呂(はたのまひろ)という少年です。しかし彼は主人公ではありません。
 実際に事件に巻き込まれたり、首を突っ込んだり(?)する役目の道長が主人公。

 この道長のキャラクターが、ものすごくよいのです。何も特別な力を持つわけではない、
 ただ、育ちがよく、まっすぐで、人間が上品に描かれます(ゆえに妖異に巻き込まれる)。
 この道長の魅力が物語を引っ張っていると思います。読後感がとてもよいです。

 平安京の道長の周りで起こる妖異ですから、最初のころは父の兼家や兄たち、
 さらに物語が進むと舅の源雅信や妻の源倫子、源明子、明子の一族・源高明の遺族、
 道長の仕える中宮定子、道長の同僚である藤原公任ら、おなじみの面々が続々登場
 そのあたりも私にとっては楽しかったです。
 平安朝の雰囲気を楽しむという意味では、この1作目が特にオススメです

 2冊目の『道長の冒険』では、真比呂が魔の力に囚われてしまい、彼を救うため、
 道長が猫の化身「寅麿」を従者に不思議な世界を冒険、ファンタジー度がさらにアップ。
 典型的な異空間での冒険旅行もので、得意ではないはずなのですが、テンポがよく
 道長と寅麿のキャラクターもよいので一気に読めました☆(簡単に事態が解決しすぎる気もしますが)
 全然ちがうけど、澁澤龍彦『高丘親王航海記』を思い出していました。
 私にとっては1作目あってこその2作目という感じです。
 
 
平安妖異伝 (新潮文庫)
平岩 弓枝
新潮社
2002-09-30


 


 ☆参考☆
 
高丘親王航海記 (文春文庫)
澁澤 龍彦
文藝春秋
1990-10


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