◆ドラマ紹介◆奈良時代、2009年TBS系、中村獅童、山本耕史、永井大

 正式タイトルは「唐招提寺1200年の謎~天平を駆けぬけた男と女たち」。
 唐招提寺本堂大改修のドキュメンタリーと、調査でわかった事実を交えた内容の
 唐招提寺建立の再現ドラマの2本立てという内容です。

 

 番組は、現代の唐招提寺大改修に密着したドキュメンタリーから始まります。
 2000年から始まった平成の大修理は、この2009年に完成、落慶式が行われました。
 唐招提寺の金堂は、奈良時代建立の貴重な遺物です。

 天平唐招提寺1

 天平唐招提寺2
 ▲上写真2点 番組より、CGによる金堂内部再現図

 本瓦葺き棟の東西に飾られていた鴟尾(しび)は、劣化のため交換することになりました。
 東側の鎌倉時代の鴟尾は、外してみると当初からヒビの入った失敗作であったと判明し、
 また西側の天平時代当初からの鴟尾は、さすがに経年劣化が激しくなっていました。

 遠目でしか見られない鴟尾なので実感がありませんが、近くで見ると非常に大きい。
 現代の技術でも、ヒビ割れなく美しくつくるのは難しいそうです。

 天平唐招提寺3
 ▲同じくCGによる外観再現図。矢印を加えた部分が鴟尾

 また金堂の木材調査によると、781年に伐採された部材が存在することが判明し、
 金堂の建立はこれ以降ということが立証されています。
 781年というと、なんと平安京遷都を断行した桓武天皇が即位した年にあたります。
 鑑真のための唐招提寺、その中心となる金堂の建立は、鑑真来日より約30年経過した
 鑑真没後の時点となり、かなり遅れていたといえるのです。



 さてこうしたドキュメンタリーパートを踏まえ、再現ドラマパートが始まります。

 主役は鑑真に仕え中国から渡来した若い僧・如宝(中村獅童)。
 如宝が主要人物として登場する、永井路子さんのドキュメンタリー調の小説『氷輪』を
 思い出しましたが、同作を参照している部分も多いそうです(クレジットより)。
 ドキュメンタリーパートには、永井さんご自身も登場されていました。

 ドラマではほかに、入唐経験があり如宝と親しくなった藤原刷雄(よしお)(時の権力者
 藤原仲麻呂の息子、山本耕史)、あるきっかけで知り合うのちの和気清麻呂(永井大)
 が登場し、彼ら若い男子の友情物語が一つの軸として描かれます。

 話の本筋は唐招提寺建立の苦難の物語です。
 苦労して来日したものの、聖武太上天皇・光明皇太后と彼らの娘・孝謙天皇以下への
 授戒が済むと、鑑真は用済みといった体で、元からの東大寺勢力から圧迫されます。
 新田部皇子の遺地を寺院建立のために与えられますが、そこは荒地……

 背景となった当時の日本の政治状況が、ドラマ内では進行します。
 ドラマの合間にも時折ドキュメンタリーが挟まれ、解説映像が流されます。
 例えばこうしたボード(&解説)など……
 天平相関図1

 天平相関図2
 ▲ドラマの合間に挟まれた解説のボード。下の鴟尾をイメージしたキャラクターがおしゃべりしながら解説。
 ほかに通常ナレーションによる映像解説などが挿入される


 最初見たときは「はじめのドキュメンタリーパートにまとめてくれればよかったのに」と
 鬱陶しく感じましたが、今回見直してみて、やはりこの構成はよかったと思い直しました。
 なぜなら、やはり古代は視聴者にとって馴染みが薄い。
 ましてや人物関係など初見で把握する(してもらう)のはたいへん難しいからです。
 ……古代の大河ドラマ、放映時にはこの手法ありかもね?


 さて、このドラマの藤原氏の主要登場人物は、藤原仲麻呂(永島敏行)です
 仲麻呂は、息子の刷雄の働きかけもあってか、唐招提寺の建立には協力的でした。
 仲麻呂邸の家屋の一部が移築され、寺の食堂に使用されたことがわかっています。

 唐招提寺の建立にあたっては大きな働きを果たした仲麻呂ですが、叔母である
 光明皇太后との血縁関係を利用し強引に政界で力を増し、また反対勢力の
 橘奈良麻呂謀反の動きを察知するやかなり強引なやり方で敵を死に追いやる……

  「藤原氏は古来より帝にお仕えする一族なのだ。
  この国のゆくえを最も深く考える
――
  それ以外の連中は消えて当然なのだ!」

 息子の刷雄は、父の言う「(しん)の藤原」を理解することができません。
  「わたしには無理です! 真の藤原になどなれません!」

 刷雄は苦労知らずのお坊ちゃんで弱いけれど、人のいい青年として描かれていました。
 仲麻呂は孝謙太上天皇と道鏡の勢力に反旗を翻し討たれますが、一族が処刑される中、
 刷雄だけは仏教へ深く帰依していたことを理由に助命され、配流となっています。
 (この配流の出立のシーンは、如宝と清麻呂と三人の青春名場面です

 ただ、敵の刃の下、死を目前にした仲麻呂は、
 「諦めんぞ
 と、この国のゆくえを諦めないと、執念のように呻いていました。
 強引で傲慢でしたが、彼なりの正義があったという描かれ方だと受け止めています。


 ほかに印象的なのは、物語(歴史)を大きく動かした女性、孝謙称徳天皇でした。
 偉大すぎる母・光明皇太后の存在に苦しめられ続け、ようやく道鏡という男性に出逢い、
 しかし清麻呂が活躍した宇佐八幡神託事件により目を覚まし、己を恥じ……
 という、ある意味もっとも一般的イメージの孝謙像だったと思います。
 一人の人間そして女性として苦悩する等身大の姿を、南野陽子さんが演じました。

 
 ドキュメンタリー込みですが、滅多にない古代史ドラマのご紹介でした☆
 翌年(2010年)NHKの『大仏開眼』とかなり時代的に重なりますが、
 見比べてみるのも面白いかもしれません。

 ☆唐招提寺、初夏のレポート☆唐招提寺に平城の面影を探して



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