◆漫画紹介◆平安時代・大和和紀

 2016年の今年、画業50周年を迎えたという漫画家・大和和紀

 おてんば娘紅緒とイケメン少尉の大正ラブコメ『はいからさんが通る』がヒット、
 また古代史好きとしては、古典・源氏物語を漫画化した『あさきゆめみし』は宝物。

 ほかに古代史を舞台とした作品には、額田女王らを描いた『天の果て地の限り』、
 源氏物語のアレンジバージョンといえる作品に、初期の作品『ラブパック』があります。
  天の果て地の限り は紹介済み(記事へリンク)



 さて、今回とりあげるのは『春はあけぼの殺人事件』。
 春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山ぎは……(枕草子)の「春はあけぼの」。
 舞台は平安時代の宮廷、主人公は枕草子の作者・清少納言
 大和和紀最新の平安漫画です(とはいえ執筆は『あさきゆめみし』連載中とか)。

 春はあけぼの殺人事件
 ▲大和和紀『春はあけぼの殺人事件』講談社、2007。併録は往年の名作「レディーミツコ」。

 表紙の元気そうな女の子が清少納言。
 バディを組むとおぼしき後ろの男子は、清少納言の(元?)夫・橘則光
 不朽の文学作品を残した清少納言ですが、その夫・橘則光は、文学にはまるで
 理解のないというか苦手な男性であった、ということは枕草子にも書かれています。

 ほかの主要登場人物に、もちろん清少納言の大事な女あるじ・中宮藤原定子
 そして則光の主人であった藤原斉信がいます
 斉信は清少納言の才能を絶賛していたことが、やはり枕草子から伺えます。
 (自分で書いてるところがスゴイけど……まぁ、清少納言の自慢もあるだろうけど、
 それ以上に自分に対する高評価は定子さまの評価につながるからね~)


 大和和紀漫画ですからして、やはりヒロインは元気印の跳ねっ返りです。

  (則光)そりゃあ おまえは家も守らず 中宮さま 中宮さまと
   イジョーに御局にへばりついて(…)それでもオレはがまんして
   離婚もいいわたさずに……

 則光にはこんなことを言われていますが、清少納言も、

   せめてあんたに 中宮さまや斉信さまの ツメの先ほどの
   センスがあればね まっ無理だろーけど

 などと返す。

 しかも清少納言、口だけでなく、事件解決のためなら夜の御所を調査に歩き回り、
 斉信の前だろうが木に登り出す。果ては女院(敵方?道長の姉)の女房と大乱闘。


 ストーリーは、“殺人事件”とある通り、清少納言が則光や斉信を巻き込んで
 殺人事件解決に邁進する展開です。
 というのも、彼女はその出現が宮中を揺るがした“鬼”を目撃してしまったの
 ですが、なんと、中宮定子の顔をした女の鬼で……?!


 文庫本一冊のうち1/3強のボリュームで、『あさきゆめみしとはガラッと変わった
 軽いタッチの平安宮廷世界
を楽しめます
 氷室冴子の少女小説『なんて素敵にジャパネスク』も思い出しました。

 貴族の権力争いというテーマもあるのですが、そこは表にはあまりださず、
 全体的にはギャグテイスト。木に登ったり人前で飯食ったりめちゃくちゃ(笑)
 しかし調度など背景は『あさきゆめみし』世界ですからさりげなく豪華です
 ご存知であれば、『あさきゆめみし』の近江の君や末摘花の君エピソードの
 ノリにちょっと近いかもしれません


 
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