◆史跡案内◆奈良/妄想

 西大寺にて藤原仲麻呂と女帝を想う


 藤原仲麻呂の乱鎮定のため建立された西大寺


 今日は後半、孝謙・称徳女帝に関する小説的な想像のお話になっていきます。
 そのへんは妄言として流してください(笑)

 四天王に踏まれる邪鬼は仲麻呂?!

 奈良の西大寺は、764年の藤原仲麻呂(恵美押勝)の叛乱発覚に際し、
 その平定のため孝謙上皇(称徳天皇=重祚)が造立することを誓願した金銅四天王像を、
 安置するために建てられたお寺です。


 西大寺四王堂
 ▲現在の西大寺にて、四天王を祀る「四王堂」は江戸時代の再建


 残念ながら度重なる火災などで、西大寺には奈良時代の創建当初の建物も、
 そのときの四天王像も残っていません(現存の四天王像は鎌倉時代の作)。
 唯一残った像が、実は、四天王の足元に踏みつけられている邪鬼なんです

 この邪鬼って、平定すべき藤原仲麻呂の象徴なのでしょうか?

 今に伝わるのが 仲麻呂だけというのも面白いですね


 西大寺東門
 ▲大和西大寺駅から近い入口は、正門ではなく東門


 人間関係が面白い、孝謙・称徳天皇の歌碑

 この西大寺境内鐘楼のそばには、女帝の歌碑があります。

 西大寺歌碑1

 此里者 継而霜哉置 夏野尓 吾見之草波 毛美知多里家利

 この里は継ぎて霜や置く夏の野にわが見し草は黄葉ちたりけり(万葉集19-4268)

  この里は霜が降り続くのでしょうか。夏野で見た草は、すっかり黄葉しています。
   ※碑は「霜置哉」になっていますが、改めています

 詞書によると、なんと藤原仲麻呂邸に行幸した時に詠まれたとか。
 この西大寺が、孝謙による仲麻呂打倒の発願から造られたことを考えると、さきほどの
 唯一残された邪鬼もそうなんですが、なんだか不思議ですね。
 さらに可笑しいことに、この歌碑を作ったのが……

 西大寺歌碑2
 まさかの道鏡関係者です!


 妄想タイム、孝謙・称徳天皇と仲麻呂、そして道鏡

 女帝といえば道鏡 と決まり文句のように出てくる……いわゆるスキャンダルです。
 男女がともにいるだけで噂になり、しかも根拠のない醜悪な尾ひれがついていく……。
 男帝の場合にはそんな噂にはならないか、なっても指弾されることなど皆無なのに、
 帝が女だというだけで、下卑た想像になっていきます。


 女帝の生涯を通して、男女関係が頻繁に取りざたされるといえば、仲麻呂もです。
 仲麻呂の栄華、一転しての凋落に、女帝との男女関係を見る向きが多い気もします。
 果たしてどうでしょうか。

 
 西大寺歌碑3
 ▲里中満智子『女帝の手記 孝謙・称徳天皇物語 3』(講談社KCDX版、2015年)
 里中満智子の傑作漫画『女帝の手記』もそのひとつ。


 + + +
 さて、妄想タ~イム!
 藤原仲麻呂と孝謙天皇は、いわゆるデキていたか
 ……私は、そうは思わないんですよね~。

 まず女に不自由するはずもない仲麻呂に、メリットないような気がする。
 冷静に考えれば、むしろ危険しかないのでは。

 だって、「恋愛ごっこ」なら、男女の仲になってしまったらそれがピークで、
 どんな魅力的な相手であっても、あとは下り坂になるだけ。
 結婚もできないし、子供も作れないし、二人で同じ目標を目指せるわけでもなし……
 次のステップに進みようのない二人。
 もし仲麻呂が多少なりとも計算のできる男であれば、その道は選ばない気がします。

 そりゃあ、恋愛経験のない(禁じられた)女帝に対し、甘言のひとつやふたつや……
 ひょっとしたら囁いたかもしれない。
 もし、万が一そんなことがあったとしてーもっ!
 仲麻呂側は言質は与えなかったろうし、決定的なことはなかったんじゃないかな。
 それくらい仲麻呂には簡単なことだったんじゃないかな(それ以上は逆に難しくなる)、
 な~んて私は想像しています。

 そうそう、この仲麻呂寵愛失う→道鏡の台頭→仲麻呂の乱の流れが、なんでか
 女帝のイマカレとモトカレが云々……的な雰囲気で語られるのも私には腑に落ちなくて
 みんなさぁ(特に男)、女といえば恋愛キャッキャしか頭にないと思ってなくって




 というわけで道鏡ですが……
 まだ私には、決定的なイメージができていません。
 ひとつだけ断言できるのは、巨根説だけは笑止ってことかな(くだらなさに反吐が出る)。
 西大寺で聞いた話では、「道鏡はイケメンだったのではないか」って仰る人が言うには、
 「だからこそ噂が立った」と……! なるほど、そうかもしれません!

 とりあえず、道鏡と女帝が男女関係だったかどうかは措いといて、
 道鏡はイケメン僧だった、に一票で






 ☆参考:境内図(見づらい場合はクリックを)
 西大寺地図
 歌碑は記載がありませんが、鐘楼の近くです。

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 西大寺に称徳天皇の足跡を追う(八角塔基壇など)

 

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