平安朝のはじめごろ、嵯峨天皇(在位809-823)の内親王に、
有智子(うちこ)という名の女性がいました(807-847)。
彼女は女性ながらに漢詩の上手として名を馳せました。
文人天皇・嵯峨の娘としてふさわしい気高さと才を持ち合わせたそうです。
有智子内親王については、以前にその生涯とお墓レポを載せています。
有智子内親王のこと さらに記事内冒頭のリンクから、『続日本後紀』に
掲載された、内親王のもっとも有名な漢詩を読むこともできます。
* * *
今回の漢詩は、淳和天皇時代の勅撰漢詩集『経国集』より。
いままで有智子内親王の漢詩を3首みてきました。
上のリンク内にある『続日本後紀』所載の「春日山荘」、
そして最初期の作(13、4歳)「奉和製江上落花詞」(『雑言奉和』より)。
この2首のほか、8首が内親王の漢詩として残っていますが、
すべて『経国集』からの出典となります。
前回『経国集』から1首確認して(11巻090)、今回はその続きです。
七言賦新年雪裡梅花一首
公主(有智子内親王)
春光初動寒猶緊
一株梅花雪裡開
想像宮中嬋娟處
暗知黄鳥稍相催
『経国集』11巻 106
七言賦新年雪裡梅花一首
公主(有智子内親王)
春光初めて動くも 寒(かん)猶(なお)緊(きび)し
一株の梅花 雪裡に開く
想像す 宮中嬋娟(せんけん)たる処
暗(ひそか)に知る 黄鳥稍(ようや)く相催すを
新年、雪の中に咲く梅の花を見て一首
公主*有智子
春の光が初めて動き出しているけれど、寒さはなお厳しい
そんな中、一株の梅の花が雪の中にそっと咲いている
想像するわ、宮中の華やかで艶やかな様子を……
けれど鶯が春を告げるのを密やかに知る、
この静かな場所**にも春がやって来るのだわ
* 公主は、中国で皇帝の娘を表す語。
**有智子内親王は斎院をつとめており、都の中心を離れている。
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