◆本紹介◆平安時代、永井路子

 永井路子「応天門始末」(『長崎犯科帳』所収)


 歴史に翻弄される一人の男~個人から見た応天門の変

 久しぶりの永井路子さんの古代史小説を紹介するシリーズです。
 今回は昭和35年(1960)1月号「オール讀物」掲載の短編、「応天門始末」。
 第一短編集『長崎犯科帳』(講談社、1965年→文庫1979年)所収にて刊行されています。

 応天門始末
 ▲文春文庫版第一刷(文藝春秋、1993年)

 藤原氏がいわゆる他氏排斥をはかった政治的疑獄事件とされる「応天門の変」。

 貞観8年(866)、平安宮大内裏の正門・応天門が炎上。
 時の右大臣・藤原良相(よしみ)と大納言・伴善男(とものよしお)は、左大臣で嵯峨源氏の
 源信(みなもとのまこと)の仕業であると訴える。
 太政大臣藤原良房(よしふさ)はこれを知ると源信を擁護したというが、信は政界から
 身を引くことになる。こののち、真犯人として伴善男・中庸(なかつね)父子の名が挙がる。
 結局、放火犯の罪を被って流罪となったのは善男父子であった――。

 藤原良房と養子(甥)の藤原基経(もとつね)らが、源信や伴善男を政界から追放するため、
 応天門の炎上を巧みに利用した事件であったと、現在ではみなされている。
 この事件を契機に良房は、若い清和天皇から人臣初の摂政を委ねられる……。


 平安神宮3
 ▲京都・平安神宮の応天門


 放火の実際の犯人は現在でもわかっていません。
 応天門の変を扱った小説や歴史書、事件を描いた伴大納言絵巻の解説本
 などは数多く出版されています!

 その一作として、この「応天門始末」は、政界トップたちの渦巻く陰謀の中、
 出世のために泳ぎまわる小役人の男の姿を描いています。
 検非違使庁の末端に勤める主人公は、応天門炎上を利用して、
 はじめ伴善男に近づこうと彼に接触します。
 ところがある日、別当直々に呼び出されるとそこには、頬の「きゅっと引締り
 刃物のような印象
」の「三十になるやならずであろう」若い公卿が……。

 傲然とした態度のその若い公卿の顔を主人公は見たことがなく、
 結局彼が誰なのか、主人公は最後まで知ることはない――


 もちろん後世の私たちはこの事件がこの後どのように収束していくか、
 わかっているわけですが、時代を生きる一個人である主人公にはわからない……

 歴史を動かす偉人たちを見据える目と同時に、永井さんが描写する時代を生きた
 名もない人たちの必死の息遣いが、胸に迫ります。そして、その結末も――

 永井路子は本当に歴史小説の名手だと思います


 なお、永井さんが応天門の変および伴善男について評した文章が、
 歴史人物評伝『悪霊列伝』(毎日新聞社、昭和52年)所収の「伴大納言
 権謀の挫折」として発表されているので、こちらもぜひ併読を!
 

 NHK『英雄たちの選択』でも応天門の変!

 先週のNHK BSプレミアムの歴史トーク番組『英雄たちの選択でも、
 なんと“応天門の変”が採り上げられました!
 平安京ミステリー 応天門の変~容疑者は政権トップ4~

 政権トップ4の顔ぶれはこちら(いずれも番組画像、下は「伴大納言絵巻」より)。
 英雄:応天門1

 英雄:応天門2


 この歴史番組は、採り上げた歴史事象のあらましとともに、もし自分がその人物だったら
 どの選択を・なぜ・するのか? というトークを繰り広げるのが目玉になっています。

 トップの藤原良房だったら、ほかの3人のうち誰を犯人に仕立て上げるか?
 3人の誰を選んだかが今後の日本の体質を決めることにも繋がったのでは――

 というお話でした。
 そう、重要なのは真相究明ではなく誰を失脚させるか、なのです。


 番組再放送は4月20日(木)朝8時~。

 ちなみに次回(同日20日の夜8時~)は「古代史ミステリー 乙巳の変
 蘇我氏はなぜ滅ぼされたのか?」です!!(再放送27日朝8時~)
 なぜに突然古代史祭
 思わず興奮してテレビのリモコンを取り落としそうになってしまいました


 

 
 
 ■書誌データ■ 




 ■番組リンク■ 英雄たちの選択 トップ頁



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